トラウマ
私目線で話します。
昼休憩を終え、少し登ると、あとは永遠と続く下り坂でした。
本当に、少しの隆起もない、どこまでもどこまでも続く下り坂だったのです。
ああ、怖いなあ…
嫌な予感はしていました。
それでも、車の運転と同じ要領で、毎回カーブが来る前にスピードを落とそうと頑張る。少し平坦になったらそこで止まろう。そう思って走っていました。
前の人たちはずっと先に進んでいるから自分が先頭。先頭、怖いな。でもゆっくり行こう。
手に全身の力を込めて力一杯ブレーキをに握りしめる。
なんとかカーブを曲がる。
またカーブが来る。
一旦落としたスピードもあっという間に上がっていく。
え?なにこれ止まんなくない?
濡れた道路、どんどん上がるスピード、後ろからくる車、寒さにかじかむ手
気づいたら私は恐怖に囚われていました。
毎回カーブが来るたびに手に全身の力をかけて力一杯ブレーキをに握りしめる。
それでも、かろうじて曲がれる速度に落ちるだけで、全然遅くならないのです。
怖い、怖い。涙が滲み、手が震えて来ました。
パニック状態に陥った私は、これは一度止まって落ち着けるしかないと思いました。
必死にブレーキを握りしめるものの手の握力はもう限界だった。腕の筋肉は疲労し寒さで力が入らなかった。
どんどん早くなっていく。。。
気づいたら対向車線に出ていた。一歩間違えれば即事故、即死。そんなことすら考えられなかった、とにかく止まりたい!!止まれない!!!!
恐怖で周りが見えなくなっていたのです。
「止まらないーっ!!」
恐怖のあまり叫び出す。
「寒さに手がかじかんで力が入らないのかも!」
仲間が言う。それならどうしたらいいのよーーー!!!
本当に怖かった。もう手に力が入らない。私はもう死ぬかもしれない。
あ、カーブだ
「あのガードレールに体当たりすれば止まるんじゃないかな」
私はその時一瞬、そう考えてしまったのだと思う。
あまりにも浅はかでバカな考え。
あの時少しでも、延々と続く下り坂に立ちはだかってみようという勇気があれば、そんなことはしなかっただろう。
今でもなぜそんな選択をしたのかわからない。
ただあの時の私は、とにかくこの地獄から抜け出したかった。止まりたかったのだ。
結果、ガードレールに衝突し、身だけ放り投げられそのまま崖下に30メートル落下。途中で意識失い、気づいたら崖下でうつ伏せになっていました。
あ、私落ちたんだ…
上体を起こそうとする
うあっ・・・なんだこれ
背中全体が重い違和感と鈍痛で、その場で座ることができなかった。
崖上から「おーい、気づいたら手を振ってー!」声が聞こえた。
手を振った。人が何人かいる。おそらくサークルの仲間だ。
その後すぐにサイレンの音が近づいて救急車が崖上に止まった。
救急隊員が数名、降りてこようとしていた。
こうして私はサークル合宿から一変、入院生活へと切り替わることになったのです。
この日の紅葉のまぶしいほどの赤は、私にとって毒々しく鮮紅な血の色に見えたのでトラウマです…^^;